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Q「『追って認否』するとは何ですか?」

取引先のA株式会社が200万円の売掛金を支払ってくれません。話し合いを重ねてもラチがあかないので、裁判を起こしました。弁護士に依頼はしていません。訴状は、裁判所書記官に教えてもらいながら、何とか自分で書き上げました。

裁判を起こしてから、弁護士がA社の代理人になりました。第1回期日の前に届いた答弁書を見てびっくりしました。答弁書が1頁しかないのです。請求の趣旨に対する答弁では「原告の請求を棄却する」等とし、請求の原因に対する答弁では「追って認否する」としか書かれていません。どういうことなのでしょうか。

第1回期日では、A社代理人の考えを問い正すつもりでした。ところが、第1回期日には、A社代表者もA社代理人も、法廷に来なかったのです。それなのに、裁判官は、平然とした顔で次の期日をいれようとするのです。裁判に出頭しなければ、原告の言い分を認めたことになるのではなかったのですか。私は、法廷で裁判官に抗議しましたが、裁判官は取り合ってくれませんでした。

これでは、被告が時間稼ぎをしているだけではないのですか。それなのに裁判官が被告の思うがままにしているということは、裁判所とA社代理人は通じているのではないでしょうか。私も、弁護士を依頼した方がよいのでしょうか。

A「答弁書作成が間に合わないときの決まり文句です」

「追って認否する」とは、くだけた言い方をすると「今回の期日までには言い分の整理が間に合いませんでした。今回は言い分を述べることができません。次回には言い分を述べるので待ってください」という意味です。第1回期日までに答弁書の作成が間に合わないときの決まり文句です。実務上はよくあります。といいますか、答弁書において請求原因に対する実質的な認否をしている方が少ないのではないでしょうか。

本来は、答弁書の中で請求原因に対する実質的な認否をしなければいけないことにはなっています。ですが、実際には、様々な事情でそういう訳にはいかないのです。

まず、被告に訴状が届いてから、弁護士に依頼するまでに時間がかります。被告に顧問弁護士がいれば話はスムーズなのですが、現在の日本では弁護士と付き合いがない人の方が多いようです。そうなると、知人を通して弁護士を紹介してもらったり、ホームページを検索したり、弁護士会の法律相談に行ったりして、受任してもらえる弁護士を探さなくてはいけません。ここまでに数週間かかることもあるようです。

次に、弁護士が受任してから、書面を作成するまでにも時間がかかります。受任弁護士としては、依頼者から事情を聴取し、事案の内容を把握してから、訴状に対してどのように対応するのかを検討しなければなりません。被告代表者や担当者から一通りの事情を聴取できればよいのですが、実際には複数の関係者から事情を聴取しなければならないこともあります。場合によっては、関係機関から証拠となる資料を取り寄せなければならないこともあります。

事案にもよりますが、訴訟提起から第1回期日までの期間は、被告代理人が答弁書を作成するまでの準備期間としては短いのです。そのため、被告代理人としては、第1回期日には「追って認否する」とだけ記載した答弁書を提出せざるを得ないのです。時間稼ぎといえば時間稼ぎなのですが、実務上は、仕方がないと受け止められています。

被告代理人が第1回期日を欠席したとのことですが、これもよくあることです。裁判所が第1回期日の日時を指定するとき、被告に弁護士がつくかどうかわからないときは、裁判所は被告側の都合を確認することはなく、一方的に第1回期日の日時を指定をします。弁護士にもよりますが、一般的な弁護士は一人で数十件の事件を担当しており、1~2か月先までは継続中の事件の期日でスケジュールがうまっています。そのため、第1回期日の日時に、既に他の事件の期日等が入ってしまい、出頭できないことがあるのです。民事訴訟法でも、第1回口頭弁論期日では、当事者が出頭しなくても、事前に答弁書を提出しておけば、答弁書の内容を法廷で述べたのと同じ扱いにするというルールになっています(擬制陳述)。「原告の請求を棄却する」との判決を求める旨の答弁書が擬制陳述されていますから、裁判所としては被告の言い分を聞く前に審理を打ち切る訳にはいかないのです。

貴方の事件では、被告代理人の対応や裁判所の訴訟指揮はごくごく一般的なものであり、問題はないようです。被告代理人は、第2回期日までには書面で請求原因に対する実質的な認否をしてくるでしょう。その内容を見て、ご自身で対応できそうであれば弁護士を依頼する必要はないですし、弁護士に依頼しなければ対応できそうにないのであれば、そのときに弁護士に依頼すればよいのではないでしょうか。

(2016年3月23日更新)

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